【TTSS】お題:ヒサギでSS 

+++++

見えない衝撃波が顔のすぐ横を掠めて飛んでいく。
ギリギリで避けた所をまだ次の波が来る。キリがなかった。
当たっても死ぬ訳でもないし必死に避ける必要はないのだが、当たれば吹き飛ばされるしその隙に相手に逃げられる、逃げられたらまた追わなければならない。相手を捕まえるまで半永久的に続けなければならないこの追いかけっこを早く終わらせたくて、だから避けているのだった。
闇雲にがむしゃらに黒い波を飛ばし続ける相手を睨み付けて、ヒサギは手にした長い棒を握り直した。早く帰りたい、そう思いながら。
一つ目を跳んで避け、その勢いで二つ目をしゃがんで避け、三つ目は横に転がって避けた。怪我もしないのだから多少の無理はどうとでもなるが、痛みはあるのでできれば無理はしたくない。そう思いながら四つ目は棒で薙ぎ払った。そうして少しずつ相手に近付いていく。少しずつ、相手の引き攣った顔がはっきりと見えるようになってきた。元々よく見えているのだから、見えるようになったというのは語弊があって、たぶん、相手の表情が変わってきた、という事だった。
「そろそろ諦めてくれよ…」
ぼやくようにそう言うと、相手は嫌だ嫌だと大きく首を振った。
しかしその反論を聞く訳にはいかなかった。
相手の鼻先を抉り取りそうな程の勢いと至近距離で、ヒサギは大きく棒を振った。
もう終わりだ、と目を閉じた相手は、何もぶつかってこない事に気付いて恐る恐る目を開く。
その瞬間はまだ、何も起きていなかった。
相手が目を開けヒサギと目が合った途端、相手の身体は何かに引き裂かれた。
引き裂かれた部分からは真っ赤な血の代わりに白い光のようなものが溢れ出し、そして次々と消えていく。
そうして最期には何も残らずに全ては消え去っていた。
「終わった…」
大きく息を吐き、棒を杖のようにして体重を預けて、ヒサギはそう呟いた。


大きな扉をくぐって戻ると、丁度同じタイミングで正面にある別の扉からも戻ってきた人物が居た。
真っ黒なフードと真っ黒なワンピースの女だった。
少しだけ目が合い、それでいつも通り終わりだと思っていたヒサギの耳に、前触れなく女からの声が届いた。
「おつかれさま」
初め自分に言われているのだと気付かずにぽかんとしていたヒサギは、慌てて女の方をまっすぐと見る。
彼女は明らかにこちらを見ていた。
「どうも」
ようやっと、それだけを返す。
「そっちは大変なんだね」
感情の籠もらない淡々とした声が更に続き、“会話”が始まっている事にようやく気付く。
「いや、単純だから、大変ってわけでもない」
…と思う、と小さな声で付け足し、ヒサギはそう返した。
「そう」
女が返したのは、残りはそれだけだった。
あとは何事もなかったかのように、歩き出して去っていってしまった。
正直何が起きたのか分かっていない状態のヒサギだったが、それでも得体の知れない高揚感のようなものを感じずにはいられなかった。
次彼女と会うのはいつになるのかは分からなかったが、今度は自分から話しかけてみようと、そう思ったのだった。


+++++



20分。
ヒサギとルイの話。
っつってもこの二人が会う事なんて滅多に無いので、次会うのはホントにいつなんだかってレベル。

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://saule495.blog82.fc2.com/tb.php/1541-347a0d2a