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【TTSS】お題:白い 

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退屈だ。そう声には出さずにヒサギは呟いた。
どうやら予定よりも二日程早い時間に来てしまったらしく、すでに動きは始まっていたものの、終わりまではまだ時間が掛かりそうだった。
それはそうだ、終了日は二日後なのだ。
辺り一帯を見回せる手頃な木の上で、ヒサギは周囲の目も気にせず大きな欠伸をした。
その場所には、多くの人間が集まっていた。厳つく武装した者も、仰々しく飾り付けた者も、怯えながら武器を持つ者も、大勢だった。とても欠伸などできる雰囲気ではないが、ヒサギが何一つ気にしてはいなかった。
まるで戦争でも始まるのかというこの様子が、まさかたった一人の人間を殺しに向かう図だとはなかなか思えないだろう。けれど先を知る自分以外の今この場にいる人々が、この出来事の結末を信じる事もできないだろう。
二日。二日経ったら仕事だ。今ここで集結し、そして何処かへ移動するはずの彼らの最期は、この場所なのだ。
それを、見届ける。
久々の大仕事に、ヒサギはゾクリと身体が震えるのを感じた。
大地が真っ赤な海に染まるのを期待して、獲物を持つ手が震える。それに呼応するかのように、声を持たない相方がぶるりと大きく震えた。

しかし、期待していた世界は訪れなかった。
それどころか、あっという間にやってきた二日後は、あまりにも呆気ないものだった。
集まっていた大勢の人々は、予定通り一度何処かへと散らばっていった。恐らく作戦だったのだろう。分散して、方々から的を狙う。
それが恐らくどこかでギシリと狂ってしまった、若しくは的の狙い通りだったのかもしれない。
散らばっていた人々は泣き叫び喚き転がるように走りながら再びこの場所に戻ってきた。
予定の場所しか見張っていなかった所為で何が起きたのかは分からなかったが、走り戻ってくるそこには興味はなかった。
予定の場所がここであるなら、全ての結末はこの場所で見る事ができるのだから。
阿鼻叫喚。まるで追い詰められるかのように、次第に二日前と同じくらいの人数が戻ってきていた。全員ではないのだろうが、おそらく今戻ってきていない人々は、永遠に戻ってくる事はない。
そして、予定の時間が訪れる。
それは本当に一瞬の出来事だった。
一瞬で、辺り一帯から声という声が消え去った。泣き声も、叫び声も、悲鳴も、全て。
更に声だけでなく、影も。
予定の時刻丁度に、大地に残されたのは真っ白な砂だけだった。
それがただの砂ではない事は、ずっと見ていたヒサギにはすぐに分かる事だった。
灰。一瞬で燃え尽くされた、人間だったモノの灰だった。
「なんつー奴…」
的となっていた一人の人間が、集まった全ての人を殺す。
聞いていたのはそれだけだったが、どんな奴がどんな方法で殺戮を行うのかまでは聞いていなかった。
一瞬で終わる出来事だとは、思っていなかった。
辺り一面に広がる白い砂は、風が吹く度に徐々に徐々に飛ばされていく。もしここが風のあまり吹き込まない土地であれば、白の砂が残る伝承の地になり得たかもしれないが、それは無理な話だったようだ。年月が経てば砂は跡形もなく消し飛んでしまう、そんな風の吹く土地だった。
死んだ事にも気付いていない連中を狩るには、丁度いい終わり方だった。
ヒサギは二日振りに立ち上がると、軽く飛び上がって白の世界の真ん中に着地した。案の定、辺り一面にぼんやりとした白い影が大量に浮かんでいる。
一振りで何人いけるか…そうつまらない事を考えながら右腕を上げた時、視界の隅に白に混じらない黒を見掛けた。
黒い布を頭にも首にも巻き付け風に靡かせている姿は、この白い世界でやけに目立った。視線を向けたタイミングで背を向けて歩き出した為顔は見えなかったが、その背丈はどう見ても人間の大人には見えなかった。
「子供…?」
この場で、生きている人間。それはつまり、この場に数分前までいた人間が狙っていた的のはずだった。
「……もっとちゃんと見ておけばよかった」
過ぎた事を少しだけ悔いて、ヒサギは黒い影が見えなくなるまで見送った。
そしてその姿が完全に見えなくなると、躊躇無く右手に持つ長い棒を大きく振った。
「121人…三分の一か」


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30分。
最初「赤い」のつもりで書いてたのに途中から「白い」になってた。
ヒサギの話考えるの楽しい。

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