【TTSS】お題:青い 

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その姿は、ずっと探しているのに見付からなかった。
もう随分と前から的となっているのに見付ける事ができず、結果、時間の空いた時にその“時間”に居合わせていたら探す、というのが残作業となってしまっていた。いつからその残が続いているのかは、もう覚えていない。
今日はその作業に少しの時間だけ手を付けられる日だった。組んだ訳ではなく、偶然の時間ではある。
ルイの視線の先には、一人の人間の少女がいた。
おかしい、と、顔にも声にも出さずにルイはそう思った。
何度か調べているうちに、もう大分時間も場所も絞り込んだはずだった。そしてこの時間、この場所―――この電車の中で間違いはないはずだった。一両編成のこの電車に乗っているのは、運転手とこの少女だけである。しかし、この少女は的ではない。何故ならこの少女は生きているからだ。
運転手のいる電車の先頭は狭い部屋のようになっている。もしかしたら、そこにまだ誰かいるのかもしれない。
ルイは視線を運転室の方へと向けた。

「あの」
声が聞こえた気がした。
一人しか存在していない車両の中で声がする訳がないと思っていたルイは、初めその声は空耳だと思っていた。
「あの…っ!」
もう一度同じ声が聞こえ、そこでようやくそれが、この車両に唯一存在している人物、少女の声だと気が付いた。視線を再び少女へと向けると、その目ははっきりと自分の事を見ていた。自分の身体の向こう側の景色ではなく、自分の目を。
「何してるんですか?」
少女の問い掛けは、ルイの耳には届かなかった。少女の問い掛けよりも、自分自身の中に渦巻く疑問の方が遥かに大きかったからだ。的は見付からないというのに、的ではない人間が私の事を見ている。そんな事態は、なかなか巡り会えるものではなかったし巡り会いたいものでもなかった。
「どうして?」
答えの見付からない渦に、ルイの口からは自然とその問い掛けが溢れだしていた。
「どうして、見えるの?」
問い掛けたはずが逆に問い掛けられ、少女は困惑しているようだった。
「どうしてって言われても…」
しかし少女の言葉はやはりルイには聞こえていなかった。問い掛けた事すら、ルイには自覚がなかったのだ。頭の中で発生した疑問符に、自分一人で答えを探している、つもりだった。ルイの問いへの答えを迷っている少女の様子は、ルイには見えていなかった。
少しの空白の時間をおいて、ルイの中には一つの答えが浮かんでいた。
「私は、場所を間違えただけだから」
捻り出したというよりは、本当にぼんやりと灰色の水の中から浮かんできたような答えだった。まだ完全に浮かび上がりきっていない答えは、濁った水の中に輪郭だけを見せている。
「ごめんね、気にしないで」
まるで答えのない場所から逃げるようだった。
それでもルイには、逃げる事しかできなかった。
どのみち、タイムリミットが来ていたのだから仕方がなかった事だ。
そう自分を納得させて、この“時間”から退却した。

どうせまた探さなければいけないのだから。
それだけは変わらない事実だった。


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20分。
お題詐欺もいいとこですね…
言い訳すると電車は晴れた夏の日に海沿いを走ってるイメージだったんです。

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