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【TTSS】お題:無題 

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「呆れた子だね」
まるで最初から分かっていたかのように、女の表情から鋭さが消え去った。顔は見えないが、青年の雰囲気も随分と穏やかになっているような気がする。
それでもまだこの場所も、人も、何もかもが分からないものだらけであることに変わりはない少年にとっては、まだ緊張を解く訳にはいかなかった。そう思っていた。
「ヨン、ちょっとこの子部屋に入れてやって」
女が壁に向かって言った。
誰かを呼んでいる、ということしか分からなかった少年にも、すぐに最低限の事態は読み込めることとなる。
スッと音もなく壁に隙間が現れ、そしてその奥に暗い空間があるのが見える。え?と思う間もなく、その空間から一人の小さな姿が現れた。
色白と言うよりも真っ白な肌と、さらりと揺れる薄く淡い黄緑色の髪。この国ではまず見掛けないであろう色の取り合わせを持って現れたのは、少年とも少女とも言えそうな、中性的な雰囲気の子供だった。少年よりもずっとずっと幼く見え、くるりとした空色の瞳がおずおずと少年を見上げていた。
ヨンと呼ばれたその子供は、一度女を見、次に青年を見、最後に少年を見た。そして迷うことなく少年に向かって頷いた。
「え…っと、」
「ほら、ぐずぐずしなさんな。中入って頭冷やしといで」
女に言われ、どうしたものかと迷う少年に、青年は声を掛けることはなかった。ただ、じっと少年のことを見ていた。行くなとも、行けとも行っているようには見えず、やはり彼の考えている事は分からなかった。
青年から目を外し、女を見、そして少年は最後にヨンの事を見た。
ヨンはまだまっすぐに少年のことを見たままで、壁の隙間は開いたままだ。
少年は考え、そして決めた。
物が多く散らばりごちゃついた室内を慎重に歩き、青年の横を通り過ぎる。
一旦足を止めた少年は、青年のことを見上げもせずに口を開く。
「ちょっと行ってくるね」
青年は何も言わなかった。ただ、静かに頷いた。
段を上り、机の横の狭い空間を通り、その間にヨンは壁の中の空間へと消えていた。中は暗く何も見えなかったが、振り返ることなく少年もそのあとを追った。
少年が壁の中へ消えると、開いた時と同じようにスッと、音もなく壁は元通りの壁となった。


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15分。
再び昨日の続き。
どこまで続くか分からない見切り発車ですよ…

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