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「星詠みの詩 ウタ」 


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「セウ?」
「空のことだよ」
 掠れた声でその少年は答えた。口調は年相応に聞こえるのに、声だけはまるで青年だった。
「僕たちは生まれた時から…デウスがヒトを創った時から、目が良いんだ。昔から、今もずっと。あの山の向こう、その木の葉の筋もはっきりと見える」
 見えないものを見透かすように。細く白い指で山を指差したあと、手を降ろし顔を上げ、空を見上げる。表情は暗がりに隠れた。
「だから僕たちは星詠みの一族として生きていく。それがデウスの求めたことだから」
 トキたちに、この言葉は向けられていない。少年は、見えない、ここには居ない遠くの存在に心を寄せていた。存在に思いを馳せ、言葉を無くしてその先をじっと見つめている。

「君たちは、目は良い?」
 ふと声音が変わり、少年は顔をこちらに向けた。
「え?あたしは…あの山の輪郭が分かるくらい…かな」
 急に変えられた話題に慌ててリーリアが答えると、リゼイルもその勢いにつられて頷く。
「オレも。あの山の…葉っぱまでは見えね」
「俺は………あの星」
 トキが指差したは、暗く小さな星。月の出ない夜だから見えるものの、月夜であればきっとその影はないのだろう。リゼイルとリーリアは指差された方角に影を探す。トキには明るく見えるであろう星は、2人の目には映らない。
「その隣。ヴェルデの星」
 メイジェスが呟くは、トキの見た星よりも小さく暗い星。翡翠の色に輝いているであろうその影は、3人の目には映らない。メイジェスは指差す手を降ろし、軽く溜息を零すと4人の輪の中から外れた。

「君たち2人は、星詠みになれるかもしれない」
 少年は、ほうと息を付くと、表情を変えずにそう言った。感心しているのだろう。
「もう少しだけ、目が良ければ」
 そう付け加えて、少年は天を指差す。つられて見上げる3人だが、その先にはただ夜闇が広がるのみ。少し離れた所になら、辛うじて小さな光が見えた。
「あのヴィオレタの星が見えたのなら、星詠みにスカウトしたかもしれない」
 少しだけ声音に笑みを乗せてそう言う。見えないことは分かっていたのだろう。残念がる様子もなく、少しだけ、楽しそうに。彼は星詠みに、誇りを持っている。

「僕はあの星が見える。でも信じて貰えない事もある。他の人に、あの星は見えないのだから。あそこに星がないと言われても言い返すことは出来ない。見えていることは、証明できない」
 少しだけ沈んだ声で、淡々とした声で。少年は誰宛でもない言葉を零す。
「星が見えることは嬉しい。でも少しだけ、淋しいね」
 この時になって初めて、トキは少年に同じ影を感じた。

 ―――それきり辺りは静寂に包まれた。


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